WRAP PANTS

WRAP PANTSの素材などの各種スペックなどに関しては商品ページをご参照ください。ここではスタイリングとディテールに重点を置いています。

私がこの業界に入るきっかけとなった人物がいます。

残念ながら昨年お亡くなりになられましたが、その方は私がパリに行くきっかけでもあり、多大な影響を受けた人物のひとりでした。生前に彼は、世界の民族衣装にインスピレーションを受けたコレクションを多数発表しており、70年代のパリで時代の寵児となったのでした。

このWRAP PANTSもまた民族衣装に原点があります。

WRAP PANTS STYLING

BUSH COTTON BUCKET HAT
HAND DYED NOCOLLAR SHIRT
WRAP PANTS

一般的なメンズウェアと比較して、著しく異なるのはWRAP PANTSには『ドレープ』が存在していることでしょう。ドレープとは、布を垂らしたときに現れる『ヒダ』のこと。

『糸』という歌があります。あなたと私を経(たて)糸と緯(よこ)糸に見立てて歌われていますね。
どんな生地も必ず経糸と緯糸で織られています。その斜め方向を『バイアス』といいますが、ここには糸が通っていない関係で伸度があり、垂れやすい特性があります。これがドレープを生む要因となります。

パンツを開くと分かり易いですね。
脇が斜めになっています。つまり、パンツの脇線がバイアスになることでドレープを生んでいるんです。

ウエスト位置にドットボタンが付いているのがお分かりいただけると思います。左右に付いていますので、適当な位置で止めてください。左右で同じ位置でなくても大丈夫です。ウエストを縛り易いように仮止めするためのものですから、それとなくパンツが落ちない程度で止めてもらえれば大丈夫です。

左右に広げたウエストを腰に巻く時に、ドレープの強弱を調整してください。
これは言葉では伝え難いので、実際に色々と試してもらいたいところですが、脇を少し落としてあげるとドレープが多く入ります。その加減をお客様のお好みに合わせて調整してもらえたらと思います。

ウエストは普通の固結びでフィニッシュします。
写真は1回目の結びですが、この後の2回目の結びに入る前にポイントがあります。
結んだ生地の端を、写真のように上下に向けてから2回目の結びに入ってください。バタフライ(蝶タイ)を結ばれたことがあるお客様ならお分かりかと思いますが、そうしないと結び目が回転してきちゃうんですね。

先ほど「ドレープの強弱を調整してください。」とお伝えしましたが、実はその調整で、見た目のパンツボリュームって結構変わるんです。
如何せん普通のパンツの2.5倍ほどの生地を使っているので、元々ボリュームがあるんです。それを身体に沿って巻き付けるか、身体から離して巻き付けるかの違いです。ちょうど良い頃合いを見つけてくださいね。

ドレープパンツの特徴から脇ポケットは付けれませんが、ピスポケットは細玉で切ってあります。また、フロントは普通のパンツと同じく、フライフロントではありますが開閉ができますので、トイレではいちいち結び目を解かなくても大丈夫です。

このパンツ、風が入ってくるので涼しいですよ。これが実用性を兼ね備えた民族の『機能デザイン』なんでしょうね。

WRAP PANTS STYLING

BUSH COTTON BUCKET HAT
HAND DYED NOCOLLAR SHIRT
WRAP PANTS

冒頭でのお話しに関しては、また別の機会に書いてみるとしても、そのお方が私の原点であるのは事実です。そのことから「民族衣装というアイテムにファッション的な要素を見出し、形にしてみたい。」という私の思いも必然と言えるのかもしれません。

現状のTAKE&SONSには、ランウェイという舞台はありません。そのようなブランドにとって、このようなアイテムはインパクトが強く扱うのが難しいとお思いになられるかもしれません。しかし私は常々「ファッションには躍動感が必要だ。」と感じています。

民族衣装にも、ある意味でフィールドウェアの側面があります。その点から、WRAP PANTSをTAKE&SONSで作るための道筋が見えてきました。

あとは、TAKE&SONS流にこなせるだろうか、、、スタイリングのハレーションを起こさせないものにできるだろうか、、、不安を抱えた製作期間でしたが、上記の2枚のスタイリング写真が撮れた時、全てが払拭されたのでした。