改めて原点を。

2022年の秋冬シーズンは、恥ずかしながらスランプの真っ只中でした。
非常に苦しいシーズンでしたが、今になって思うと、スランプだから思い切って『もうひとつの方向性』に踏み出せたのかもしれません。

それは、HEAVY JACKETを作らないということ。
とはいえ、ブランド開始以来の象徴アイテムの不在には不安がありました。

TAKE&SONSの原点にはトラッドがあります。そこを改めて表現するには、ビジュアルをフィールドに引き寄せる強烈なインパクトを発揮するHEAVY JACKETには、いちど退いてもらうことが必要だと考えました。

CORDUROY SACK JACKET ゴールドブラウン / W・L・C BANDCOLLAR SHIRT ブラウン
CHINO FIELD CARGO ベージュ / CORDUROY EAR FLAP BACKET ゴールドブラウン

いつもならジャケットにストラップベストを合わせるシーンですが、今回はシンプルにジャケットのみのスタイリングにしたのがトラッドへの回帰です。

それに伴い、作り場もドレス工場へとシフトしました。とはいえ、設立当初のフルキャンバス仕立ての正統派のテーラードではありません。当時と同じのは生地のウエイトくらいでしょうか。
重厚感のあるコーデュロイを使い、内臓物を排したライトな仕立てです。そこに加工を施すことで『ケバ』と『アタリ』を作り、上品さを抑えたラギットな佇まいに仕上げてあります。

ドレス工場での縫製による違いとは何か。
その違いは細部に宿ります。

ジャケットを立体にする作業内容はドレス工場とカジュアル工場では、その手法において著しく違いがあります。それに伴って、パターンの設計も変わってきます。つまりは別物なのです。
前に回ったイセ量の多い肩、昇りの付いた安定感のある衿、立体的な胸のボリュームなどは、イセ込みやクセ取り、テープ処理などのドレス工場ならではの縫製アプローチが成せる技です。それらは、シルエットや着用感となって現れます。
どちらが優れているというわけではなく、あくまでも求めるものの違いです。

CORDUROY SACK JACKET ネイビー / W・L・C BANDCOLLAR SHIRT ブラック
CORDUROY EAR FLAP BACKET ネイビー / RUGGED CHINO WORK PANTS カーキ (2021 F/W)

アメリカントラッドの世界には1型と呼ばれるモデルがあります。

ウエストダーツが無く直線的なシルエットを指してサック(麻袋)と人々が呼んだこのモデルの歴史は古く、1918年の『No.1 Sack Suit』にまで遡ることになります。
その後、日本においても60年代に流行したVANのジャケットもその範疇といえるでしょう。

これまでも、多種多様な作り方をしてきたTAKE&SONSのラペルジャケットも、1型をベースに独自の解釈を加えたものです。

からめのラペルロールからフロントエッジに続くラインは、あくまでも自然なカッタウェイを描く。
肩はナチュラルショルダーで仕上げ、膨らみを持たせた袖山を丸く落として形成する。
フロンドが3ツ釦で、袖口が2ツ釦とくれば、センターフックベントで決まりだ。

フロントの3ツ釦は『中1つ掛け』を推奨したい。
アメリカの『上2ツ掛け』に対し、TAKE&SONSでは『中1ツ掛け』を基本スタイルとしています。これはVANが主流としたスタイルに由来し、私も憧れを持つ着こなしのルールなのです。
注意したいのが3つ目の釦。これを留めてはいけないのだ。


今シーズンは造形を構築的に、外観はカジュアルに。従来よりもトラディショナルな佇まいを目指しました。
良い意味で、力の抜けた大人な雰囲気が魅力的ではないでしょうか。


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