「ガシャン」「ガシャン」シャトル独特のサウンドが住宅街に響く。
生地を織る機械を織機と言いますが、一言で織機と言っても手織り機から自動織機まで、実に様々な種類があります。
そもそも「シャトル」とは織機に張った経糸に緯糸を通す時に使う先端が尖った道具のことで、このシャトルが左から右へと行き来することで生地が織り上がります。
このようにシャトルが往復する様から、往復するバスを「シャトルバス」と呼ぶのだそうです。
「スペースシャトル」の由来にもなっているそうですよ。
このシャトル織機を「旧式織機」と呼ぶのに対して、シャトルを使わずに水圧や風圧で緯糸を飛ばすことで超高速化を実現し、桁違いの生産効率を誇り、産業革命を起こした織機を「革新織機」と呼びます。
生地の上にあるのが「シャトル」です。先端が尖ったシャトルの中に入っている白い糸が緯糸になります。これが織機に張った経糸の隙間を写真手前から奥へと行き来することで生地は織られていきます。
シャトル織機は生地を織っている最中にいくどとなく緯糸が切れる。糸が切れるたびに織機が止まることから側を離れることができない。
写真左は、織機裏側の針。
この針は1m強(生地幅)に渡り密集している。経糸の打ち込み本数は拘りたいところだ。
とはいえ、この針全てに経糸を通す作業は想像しただけで気が遠くなる、、、
写真右は、シャトルの中のボビン。緯糸を巻いたもの。
写真左は、織機の器械部。
現在では生産されていないシャトル織機はその都度、調整とメンテナンスをしながら使用していかなければならない。
シャトル織機が珍しいということ以前に、そもそもこの織機を扱える職人がいないのである。
写真右は、建物内部。
オイルまみれの埃が歴史を感じさせる。
このように、旧式織機と呼ばれるシャトル織機は手間がかかります。
手間がかかる上に、速度も遅いことから織れる生地も少ない、、、その希少性が価格に見合えば良いのだが、マーケットはそれを許さない。当然のごとく職人は高齢化と共に減少し、いずれは織機もろとも消え去る運命なのだろうか、、、
しかしながら、シャトル織機でないと生み出せない風合いがあるのも、また事実です。
例えば、T&Sで使用している「Mud Dyed」シリーズの生地です。このクラス特有の太番手で重みのある糸はシャトル織機でないと織れないのです。
古くは産地として、この街には至る所からこの音が響いていた。しかし、時代の流れとともに音も減り、今ではこの家のみから伝統の音が聞こえている。
時代とともに住人も新しくなり、ともするとクレームとして扱われるご時世だ。
T&Sでは、職人の情熱がこもったシャトル織機の生地を、敬意を持って使用させていただく。
そして、永遠に創りだすことのできない限りある“財産”を思う存分使いこなしてみたい。
シャトル織機で製作される生地「Mud Dyed」は2017秋冬シーズンも継続いたしますが、デザインに関しては、縫製が困難を極める為に変更させていただきます。
2016秋冬デビューシーズンの「Hunting Jacket」と「Angler jacket」は初シーズンのスペシャルとなります事をご了承ください。